
第5回は、本書の論述を凝縮した売買戦略である「定量的モメンタム戦略」です。
定量的モメンタム戦略
「定量的モメンタム戦略」の具体的な手順は以下のとおりです。
- ステップ1で、1000銘柄からなるユニバースを決定する。
- ステップ2では、1000の証券の一般的なモメンタムスコアを算出し、上位10%(100の高モメンタム株)を特定する。
- ステップ3では、ステップ2で特定した100の高モメンタム株それぞれのカエルモメンタムアルゴリズム・スコア(低いほうが良い)を算出して、カエルモメンタムアルゴリズム・スコアに基づいてこれら100銘柄をランク付けする。このランク付けにしたがって、上位50銘柄(スムーズなモメンタムを持つ50の高モメンタム株)を選ぶ。
- ステップ4では、モデルポートフォリオを構築し、季節性効果を利用するために、2月、5月、8月、11月末にリバランスする。
- ステップ5では、均等加重(銘柄特有のリスクを最小化するため)の50銘柄ポートフォリオ戦略を実行し、相対パフォーマンスの高いボラティリティと、長期にわたる相対的アウトパフォーム(または長期にわたる相対的アンダーパフォーム)の恵み(または呪い)に備える。
ステップ2の「モメンタムスコア」の計算方法は、例えばアップル(AAPL)の過去12カ月の毎月のリターンが下表のとおりだった場合、
- (0.8923)×(1.0575)×(1.0200)×(1.0994)×(1.0787)×(1.0277)×(1.0287)×(1.0775)×(0.9829)×(1.0720)×(1.1060)- 1 = 51.51%
- 中期モメンタムの計算では最後の月を除くという点だけである。これは短期リバーサルが発生しないようにするためだ。
となります。
ステップ3の「カエルモメンタムアルゴリズム・スコア」は、第6章「モメンタムの最大化ー重要なのは経路」の内容を基にしています。
- 私たちは1年以上にわたって、モメンタム銘柄選択戦略に関するありとあらゆる研究を調査し、一般的なモメンタム戦略を向上させるカギとなる方法のーつは、モメンタム株の時系列的特徴に焦点を当てることであるという結論に達した。つまり、モメンタム株がモメンタム株として分類されるようになる経路を見る必要があるということである
具体的な計算方法は次のとおりです。
- 情報離散性(ID)= 過去のリターンの符号 ×(負のリターンのパーセンテージ ー 正のリターンのパーセンテージ)
- カエルモメンタムアルゴリズムの負の値が大きければ大きいほど良い。
「情報離散性」という名前があるのに、何故「カエルモメンタムアルゴリズム・スコア」となったかは、次の記述に因ります。
- 興味深いことに、水温が徐々に変化するときのカエルの反応は、株価が徐々に変化するときの投資家の反応に似ている。例えば、株価がいきなり100%上昇する(カエルを熱湯の入った鍋のなかに入れる)と、この急上昇した銘柄は投資家の注目を集め、株価はほぼ適正価格に戻るのが普通だ。しかし、株価が徐々に上昇して、最終的に100%上昇する(水温が沸点まで徐々に上昇する)と、投資家はこういった株価の動きにはあまり注目しないため、株価はファンダメンタルバリュー以下の価格になる。
いわゆる「ゆでガエル現象」ですね。「定量的モメンタム戦略」では、急激な株価上昇を示した銘柄より、ゆるやかな株価上昇を経た銘柄を高評価するということです。
ステップ4で、何故「2月、5月、8月、11月末」にリバランスするのかについては、第7章「モメンタム投資家は季節性を知っておくべき」の内容を基にしています。
詳細は割愛しますが、ファンドマネジャーによる報告書の体裁を整えるための「ウィンドウドレッシング」と、個人投資家による「税金が動機となる卜レ一ド」を考慮して、最も効果が高いと実証されたリバランスタイミングとなります。